「証(しょう)」は、その人の身体が病気(不調)とどのような戦い方をしているのかをみるための“ものさし”です。
たとえば、証は次のようなもので判断できます。
- 「冷え」「ほてり」のどちらを感じるか
- 病気への抵抗力が「高い」か「低い」か
- 強い漢方薬の処方が「向いている」か「向いていない」か
今回は、東洋医学(漢方)で大切にしている「証」について詳しく見ていきましょう。
「証(しょう)」とは?
「証(しょう)」とは、人それぞれの体質(体力、抵抗力、症状の出方など)をあらわす指標のこと。
たとえば、2人が同じような症状を抱えていても、証が違えば別の薬を処方されることがあります。
逆にいうと、まったく異なる症状でも、証が近ければ2人とも同じ薬が処方されることもあるのです。
「証」の4つの種類
「証」には、代表的な4つの種類があります。
- 虚実
- 陰陽
- 寒熱
- 表裏
それぞれの特徴や当てはまる人を、以下で詳しく見ていきましょう。
虚実:抵抗力の強さ
「虚実(きょじつ)」は、抵抗力の強さをあらわす証です。
エネルギッシュな方は「実証(じっしょう)」、身体が弱い方は「虚証(きょしょう)」に分類できます。
実証と虚証、それぞれに当てはまる人の特徴を見てみましょう。
虚実の種類 | 当てはまる人の特徴 |
虚証(きょしょう) |
|
実証(じっしょう) |
|
漢方薬を選ぶにあたって、虚実はもっとも重視すべき証です。
どちらかが強くても病気になりやすいため、どちらにも偏らない「中間証(ちゅうかんしょう)」を目指して、日頃から養生しましょう。
陰陽:刺激への反応
「陰陽(いんよう)」は、刺激(主に熱性・寒性)への反応をあらわす証です。
活動的な方は「陽証(ようしょう)」、非活動的な方は「陰証(いんしょう)」に分類できます。
陽証と陰証、それぞれに当てはまる人の特徴を見てみましょう。
陰陽の種類 | 当てはまる人の特徴 |
陽証(ようしょう) |
・薄着を選びがち ・寒冷刺激(冷房など)が好き ・よく喉が渇く ・冷たい飲み物が好き ・平熱が高め |
陰証(いんしょう) |
・厚着を選びがち ・温熱刺激(暖房など)が好き ・喉が渇きにくい ・温かい飲み物が好き ・平熱が低め |
陽証の方は、より強い漢方薬を選んでも身体への負担が少ないです。
一方で、陰証の方が強い漢方薬を服用すると、かえって身体の負担になってしまうことがあります。
陰証の方は、効き目が穏やかで、身体への負担が少ない漢方薬を選ぶことが大切です。
寒熱:暑さ・寒さへの耐性
「寒熱(かんねつ)」は、暑さ・寒さへの耐性をあらわす証です。
暑がりな方は「熱証(ねっしょう)」、寒がりな方は「寒証(かんしょう)」に分類できます。
熱証と寒証、それぞれに当てはまる人の特徴を見てみましょう。
寒熱の種類 |
当てはまる人の特徴 |
熱証(ねっしょう) |
・体温が高い ・暑がり ・肥満気味 ・声が大きい |
寒証(かんしょう) |
・体温が低い ・寒がり ・痩せ気味 ・声が小さい |
たとえば風邪を引いた場合、熱証は「暑い」、寒証は「寒い」と感じます。
熱証の方は、過剰な熱を取り除く「生野菜」を。
寒証の方は、身体を温める「薬味・根菜類」を積極的にとりましょう。
表裏:病気の深さ
「表裏(ひょうり)」は、病気の深さ・進行度合いをあらわす証です。
病気が身体の表面にあると「表証(ひょうしょう)」、内側にあると「裏証(りしょう)」に分類できます。
表証・裏証の特徴は次のとおりです。
表裏の種類 |
特徴 |
表証(ひょうしょう) |
・病気が皮膚、髪などの「身体の表面」にとどまっている ・寒気、ほてり、筋肉痛などの「感覚的な不調」がある |
裏証(りしょう) |
・病気が消化器、循環器などの「身体の内側」まで及んでいる ・胃や腸などの「内臓の不調」がある |
どちらにも偏らない状態を「半表半裏(はんぴょうはんり)」といいます。
病気が身体の表面・内側の両方でくすぶっている状態です。
漢方薬は「証」に合うものを選ぼう
漢方薬は、自分の体質をあらわす「証」に合うものを選ぶことが大切です。
漢方薬の多くは、その人の「証」に合うものでないと、本来の効果を発揮できません。
病院や薬局で漢方薬を求める際は、医師・薬剤師・登録販売者に、できるだけ詳しくご自身の体質について伝えてみましょう。
ここでお伝えしたいのが、問診の際に症状と関係のない質問(ニキビやお腹の具合など)をされても、驚いたり身構えたりする必要はないということ。
それは、あなたの「証」を見極める診察の1つであり、より最適な漢方薬を探すために必要な質問です。
ぜひ怖がらず、つらい症状と合わせて、ご自身の体質のことも素直に伝えてみてください。
まとめ
漢方薬はその人の「証」に合うものを選ぶことで、本来の効果を発揮できます。
病気や不調の症状に合うのはもちろんのこと、今後はぜひ「証」も意識しながら漢方薬を選んでみてください。
病院や薬局で問診を受ける際は、ご自身の体質についても詳しく伝えることがポイントです。
あなたの「証」にバッチリ合う漢方薬を選んで、病気や不調を適切にやわらげていきましょう。
ご自身に最適な漢方薬を選べるように、購入する際に裏面の説明文をよく読み、わからないことがあれば薬剤師や登録販売者に相談するようにしてください。
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