漢方の世界では、人間の身体は「気(き)・血(けつ)・水(すい)」の3本柱で成り立っているといわれています。
今回は、気血水それぞれの役割や、バランスが崩れたときの対処法などをご紹介します。
「気血水」=健康を維持する3つの要素

気血水(きけつすい)とは、一言でいうと「健康を維持するための3大要素」のことです。
それぞれの要素が不足したり滞ったりすると、心身に不調が生じやすくなるといわれています。
ここでは、気血水それぞれにどのような役割があるのかをみていきましょう。
「気」=エネルギー
「気(き)」とは、生きるために必要な根源的なエネルギーのことです。
血(血液)や水(水分)を動かす役割や、自律神経に近い働きを持っています。
血や水と違って目には見えませんが、人間が生きていくうえでとても重要な要素です。
「血」=血液
「血(けつ)」とは、体内を巡る血液のことです。
全身に酸素や栄養を運んだり、ホルモンバランスを整えたりする役割があります。
血が全身に巡ると、肌や髪の潤いや、気持ちが前向きになるのを感じるでしょう。
「水」=透明な体液
「水(すい)」とは、汗・唾液・リンパ液などの「透明な体液(水分)」のことです。
身体の余分な熱を抑え、汗や尿として排泄する働きがあります。
不足すると乾燥や肌荒れを引き起こし、滞るとむくみや下痢などの不調が起きることがあります。
気血水のバランスの崩れて起きる不調

ここからは、気血水のバランスが崩れて起きる不調をタイプ別にご紹介します。
「気」の不調
気のバランスが崩れると、「気虚(ききょ)」や「気滞(きたい)」などの不調があらわれることがあります。
原因や主な症状は次のとおりです。
不調のタイプ |
原因 |
主な症状 |
気虚(ききょ) |
気が不足している |
・疲れやすい ・やる気が出ない ・風邪を引きやすい |
気滞(きたい) |
気が滞っている |
・イライラする ・ため息が出る ・喉に違和感がある |
気の不足や滞りがあると、疲れやすくなったりイライラしやすくなったりして、日常生活に支障をきたすことがあります。
「元気」や「やる気」という言葉に“気”が入っているように、人間がハツラツと生きるためには気を十分に巡らせることが欠かせません。
「血」の不調
血のバランスが崩れると、「血虚(けっきょ)」や「血滞(けったい)」などの不調があらわれることがあります。
原因や主な症状は次のとおりです。
不調のタイプ |
原因 |
主な症状 |
血虚(けっきょ) |
血が不足している |
・顔色が悪い ・立ちくらみがする ・乾燥肌になる |
血滞(けったい) |
血が滞っている |
・冷え性になる ・便秘がちになる ・肩こりや腰痛になる |
血の不調は、年齢を重ねた方や女性によく見られます。
血の不足や滞りが原因で、全身に栄養・酸素が巡らず、立ちくらみや冷え性などを引き起こしやすくなります。
「水」の不調
水のバランスが崩れると、「水虚(すいきょ)」や「水滞(すいたい)」の不調があらわれることがあります。
原因や主な症状は次のとおりです。
不調のタイプ |
原因 |
主な症状 |
水虚(すいきょ) |
水が不足している |
・胃の調子が悪い ・肌荒れが気になる ・唇がカサカサ |
水滞(すいたい) |
水が滞っている |
・むくみやすい ・下痢気味になる ・食欲がわかない |
食事の不足や運動のしすぎが、水の不足の原因として考えられます。
反対に、食事の摂りすぎや運動不足は、水の滞りの原因となります。
甘いものや脂っこいものの食べ過ぎも、水のバランスを乱す原因となるため注意が必要です。
気血水のバランスを整える方法

気血水のバランスが崩れたときは、足りない栄養を補ったり、全身にスムーズに巡らせたりすることが大切です。
具体的にどのような対処法があるのか、下記で詳しくみていきましょう。
「気」の不調の対処法
気の不調を感じたら、不調のタイプに合わせて次の改善方法を試してみてください。
不調のタイプ |
改善方法 |
気虚 |
・消化がよいものを食べる ・スタミナがつくものを食べる ・脂っこい食べ物を避ける ・十分に休養をとる |
気滞 |
・香りや飲み物にハーブを取り入れる ・リラックスタイムをつくる ・気を巡らせるものを食べる |
気虚タイプは、消化を助けるかぼちゃやネギ、スタミナをつけるウナギやにんにくなどを食べるのがおすすめです。
脂っこい食べ物は避けて、胃腸に負担をかけないように心がけましょう。
気滞タイプは、気を巡らせる働きがある大根、玉ねぎ、ピーマン、グレープフルーツなどの食材がおすすめです。
ミントなどのハーブを日常に取り入れると、息苦しさを忘れる時間をつくれるでしょう。
「血」の不調の対処法
血の不調を感じたら、不調のタイプに合う次のような改善方法がおすすめです。
不調のタイプ |
改善方法 |
血虚 |
・ビタミンが豊富な野菜を摂って貧血を補う ・血をつくる食材を積極的に摂る |
血滞 |
・軽い運動で血流を促す ・血を巡らせるものを食べる ・湯船につかって身体を温める |
血虚タイプは、食べ物を工夫して貧血を補うことが大切です。
レバー、イカ、鮭、マグロ、牛肉、卵など、血をつくる食材を積極的に摂るようにしてみてください。
血滞タイプは、ヨガやウォーキングなどの軽い運動をして、血流を促しましょう。
血を巡らせる納豆、玉ねぎ、ニラ、青魚などの食材も積極的に摂って、できれば毎日湯船で身体を温めるのが理想的です。
「水」の不調の対処法
水の不調を感じたら、不調のタイプに合う次のような改善方法を試してみましょう。
不調のタイプ |
改善方法 |
水虚 |
・果物や野菜を食べて水分を補う |
水滞 |
・食べ過ぎや飲み過ぎを控える ・適度に運動をする |
水虚タイプは、果物や野菜を積極的に食べて、身体に足りない水分を補いましょう。
おすすめの食材は、水虚を補うトマト、きゅうり、豆腐、アスパラガスなどです。
水滞タイプは、食べ過ぎや飲み過ぎを控えたり、適度に運動をして汗を流すことが大切です。
水の巡りを促す大根、リンゴ、トウモロコシ、梅などの食材もあわせて摂るようにしましょう。
まとめ
気血水のバランスの整え方を見てわかるように、身体の不調を助けるのは「食事」「運動」「休養」などの“基本的な養生”です。
心身に不調を感じる方は、今の自分の生活習慣を見直してみることで、自分にとってピンポイントの改善策が見えてくるでしょう。
基本の養生をしても不調が改善されない方は、不調のタイプに合わせた漢方薬を試してみるという選択肢もあります。
薬局で買う場合は勘で選ばず、薬剤師とよく相談をして、自分の不調に正しく作用する漢方薬を見つけてみてください。
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